電動キックボードの普及が進む中で、利用者の間でしばしば議論になるのが「ヘルメットって必要なの?」という疑問です。特に、法改正によって「16歳以上は免許不要で特定小型原動機付自転車として走行できる」といった制度が導入されて以降、街中でノーヘルで走行している姿を目にする機会も増えてきました。その一方で、事故の報道やSNSでの体験談から「やっぱりヘルメットはしたほうがいい」と感じている人も多いのではないでしょうか。
現在の法律では、原付扱いの電動キックボードにはヘルメット着用が「義務」として定められており、違反すれば罰則の対象となります。一方で、特定小型原動機付自転車として登録された車両に限っては「着用の努力義務」とされていますが、それは“しなくていい”という意味ではありません。法律上の表現がやや曖昧なこともあり、誤解を招いているのが現状です。
ヘルメットの着用は、自分の身を守るための最も基本的かつ重要な安全対策の一つです。車体が軽く、時速20kmまでしか出ない特定小型とはいえ、転倒や接触時のリスクは決して小さくありません。今回は、電動キックボードにおけるヘルメットの必要性や、努力義務の背景、着用による安全性の違い、選び方のポイント、罰則の有無などをわかりやすく解説していきます。
電動キックボードでのヘルメット着用は義務?努力義務?

法律上、ヘルメットの着用が義務かどうかは、「電動キックボードがどの区分に該当するか」によって異なります。すべての電動キックボードが“免許不要・ノーヘルOK”というわけではなく、区分によっては原付バイクと同様の扱いになります。
原付扱いと特定小型原動機付自転車で異なる法的な違い
原付扱いの電動キックボードは、道路交通法上で「原動機付自転車」として分類されるため、ヘルメットの着用が完全な義務となっています。この場合、ヘルメットなしでの走行は道路交通法違反にあたり、反則金や違反点数の対象になります。また、ナンバー取得や自賠責保険の加入も必要で、違反すれば罰則が科されることになります。
一方、特定小型原動機付自転車に該当するモデルでは、2023年7月の法改正により「着用の努力義務」が規定されました。これは、義務ではないものの「できる限り着用するよう努めましょう」という位置づけであり、警察庁の見解でも「事故時のリスクを減らすために着用は強く推奨される」とされています。



こうした区分の違いをしっかり理解しておかないと、「ノーヘルでもいいと思っていたけど実は違反だった」という事態に陥る可能性もあるため注意が必要です。
法改正によって変わった最新の着用ルールと努力義務の意味
2023年7月に施行された改正道路交通法では、電動キックボードの「特定小型原動機付自転車」への新たな分類が定められました。この新制度のもとでは、16歳以上であれば免許なしで乗れる代わりに、「ヘルメット着用は努力義務」となりました。これは特に若年層の利用を想定したもので、利便性を高める一方で安全性を損なわないようバランスを取った制度設計とされています。
とはいえ、努力義務だからといって軽視してよいというわけではありません。特に事故時の衝撃は想像以上であり、時速20kmのスピードでも頭部に大きなダメージを与える可能性があります。また、着用していなかったことが「不注意」と見なされることで、事故後の責任や保険金の支払いに影響するケースもあります。
このように、法的な扱いだけでなく、実際の安全性やリスクを踏まえたうえで「努力義務」をどう受け止めるかが、利用者一人ひとりに問われているといえます。次のセクションでは、ヘルメットを着用することによる具体的な安全効果や、実際に起きている事故データについて詳しく紹介していきます。
ヘルメットを着用すべき理由と実際の事故データ

電動キックボードは自転車やバイクと比べて手軽で身近な存在ですが、それゆえに「大したスピードじゃないし、ヘルメットはいらないんじゃない?」と油断してしまいがちです。ですが、万が一の事故が起きたとき、もっとも深刻なダメージを受けやすいのは頭部であり、その衝撃は想像以上です。スピードにかかわらず転倒の瞬間に地面に叩きつけられた場合、ヘルメットの有無によって生死を分けることさえあります。
転倒や接触時にもっともダメージを受けやすい“頭部”のリスク
警察庁の調査によると、電動キックボードによる事故のうち、身体のどこにけがをしたかを示すデータで「頭部」が最も多い部位として報告されています。特に段差にタイヤを取られたケースや、前方不注意による歩行者との接触事故では、自分のバランスを崩して前のめりに転倒し、直接頭を打つというケースが非常に多くなっています。
電動キックボードの最高速度は特定小型であっても時速20km。これは、走っている自転車や軽いジョギングよりも速いスピードであり、転倒すれば頭部に大きな衝撃が加わります。自転車用のヘルメットであっても、ある程度の衝撃を吸収し、脳へのダメージを大きく軽減してくれる効果があることが実証されています。



さらに夜間や雨天など視界の悪い状況では、転倒や接触のリスクはさらに高まります。そのようなとき、ヘルメットは「最後の命綱」として、頭部を守る最終防衛ラインとなってくれるのです。
着用していたかどうかで変わるケガの程度と責任の所在
実際の事故報告でも、同じような状況下で転倒したにもかかわらず、ヘルメットを着用していた人は軽傷で済んだのに対し、着用していなかった人は脳しんとうや頭蓋骨骨折といった重傷を負ったというケースが複数存在します。
また、加害者・被害者問わず、事故後の責任が問われる場面において、「ヘルメットを着用していなかったこと」が不注意の要因とされ、損害賠償額が増加する可能性も指摘されています。特に任意保険を利用する際、「安全配慮義務に違反していた」として減額されるリスクがある点にも注意が必要です。
「努力義務」であっても、着用するかどうかで、結果的に自分の責任や評価が大きく変わるということを意識する必要があります。これは法的な立場を超えて、自分自身を守るための判断として非常に重要なポイントです。
次のセクションでは、努力義務に違反した場合の罰則や、万が一の事故時に及ぶ影響など、法的なリスク面についてより詳しく解説していきます。ヘルメット着用を“他人ごと”とせず、リアルなリスクとして捉えるための知識を身につけましょう。
違反した場合の罰則や罰金は?努力義務でも守らないと危険

電動キックボードの利用におけるヘルメット着用は、特定小型原動機付自転車では「努力義務」とされています。これはつまり、義務ではないため、着用していなかったからといってその場で反則切符を切られるようなことはありません。しかし、「努力義務=罰則がないから無視してよい」という解釈は非常に危険であり、重大な事故やトラブルを招く原因にもなります。
道路交通法における“努力義務”の立ち位置と罰則の有無
現行の道路交通法では、特定小型原動機付自転車のヘルメット着用については「可能な限り着用に努めること」と明記されており、これはいわば「推奨ルール」に近い位置づけとなっています。そのため、警察がノーヘル状態を見つけたとしても、現時点では反則金や罰金などの直接的な処罰は行われません。
しかし、これが“原付扱い”のキックボードであれば話はまったく別で、ヘルメット非着用は明確な交通違反となり、反則金や違反点数が科される対象になります。そして、ヘルメットの装着は“安全運転のための基本的な行動”と見なされるため、たとえ特定小型でも、事故時には「努力を怠った」と判断され、損害賠償や過失割合に影響を及ぼす可能性があります。



努力義務の項目は、今後の交通事情や事故件数によって、将来的に「義務化」される可能性もあります。すでに一部の自治体では、独自にヘルメットの着用を強く推奨する動きも見られ、社会的な“着用すべき”という空気は高まりつつあるのが現状です。
事故時の損害賠償や過失割合に及ぼす影響も見逃せない
事故の場面では、「ヘルメットをしていなかったかどうか」が、被害者・加害者を問わず、大きな判断材料になることがあります。たとえば、被害者であっても、ヘルメットを装着していなかったためにケガの程度が悪化したと判断されれば、損害賠償額が減額されるという事例も存在します。
また、加害者になった場合においても、被害者がノーヘルであったことが「過失相殺」の対象となることもあり、その逆もまた然りです。つまり、「着けていなかったこと自体が問題」になるリスクがあるということです。
さらに、任意保険を利用して損害賠償が発生する場合、「ヘルメット着用の努力義務に反していた」として、保険会社が一部の補償を拒否するケースもあるため、自分を守る意味でも、ルールを超えて積極的に着用することが大切です。
次のセクションでは、実際にどのようなヘルメットを選べば安心なのか、サイズや規格、安全基準などを踏まえた選び方を詳しく解説します。見た目だけでなく、命を守るための“装備”として、ヘルメットの本当の価値を知っておきましょう。
どんなヘルメットを選べばいい?サイズ・種類・安全基準の見極め方

ヘルメットは単なる「かぶるもの」ではなく、命を守るための“防具”です。しかし、市場にはさまざまな種類のヘルメットがあり、「どれを選べばいいのかわからない」という人も多いはず。見た目のデザインや価格だけで選ぶのではなく、しっかりとした安全基準を満たしていて、実際の使用に耐えうる製品を選ぶことが非常に大切です。
自転車用とバイク用、どちらが適切?法的に適合する基準を確認
電動キックボードでの利用を考えた場合、「自転車用」と「原付・バイク用」のヘルメットのどちらを選べばよいか迷うこともあります。これは、利用するキックボードがどの車両区分に該当するかによって異なります。特定小型原動機付自転車であれば、自転車用ヘルメットで問題ありませんが、原付扱いのキックボードでは、バイク用(SGマークやPSCマークなどの基準を満たしたもの)の装着が推奨されます。
SGマークやCEマークといった第三者機関による安全基準をクリアしているヘルメットは、転倒や衝撃から頭部をしっかり守る性能が証明されています。また、通気性がよく軽量なモデルも増えてきており、夏場でも快適に着用できるタイプも人気です。



見た目やファッション性ももちろん大切ですが、最優先すべきは“守る力”。事故の瞬間にその差が命を左右することもあるため、購入前には必ず「安全規格に適合しているかどうか」を確認しましょう。
頭部にしっかりフィットするサイズと軽さが安全走行のカギ
いくら安全基準を満たしていても、サイズが合っていなかったり、ずれていたりすれば、衝撃を吸収する力は大きく損なわれてしまいます。とくに頭の形は個人差があるため、できる限り試着をして、実際に走ったときにズレないか、締め付けがきつすぎないかをチェックするのが理想です。
サイズの目安としては、メーカーによって異なりますが、頭囲(おでこのやや上あたり)をメジャーで測り、それに合ったサイズを選ぶのが基本です。また、調整ダイヤルが付いているモデルであれば、細かいフィット感の調整が可能なのでおすすめです。
さらに、ヘルメットの軽さも重要なポイントです。重すぎると首や肩に負担がかかり、長時間の着用がつらくなってしまうため、500g以下の軽量モデルを選ぶと快適に使えます。子どもや女性が使う場合は、特に軽さとフィット感のバランスを意識するとよいでしょう。
次のセクションでは、今回の内容をまとめとして振り返り、なぜ「義務ではないけれど着用すべきなのか」、その本質的な理由と、社会的にも広がりつつある“安全意識”についてお話しします。ヘルメットは、あなたの大切な日常を守る“最も身近な命綱”です。
まとめ:ルールに従って、安全・安心な電動キックボードライフを

電動キックボードは、通勤・通学や街中のちょっとした移動手段として、その便利さとコンパクトさからますます利用者が増えています。しかし、手軽に乗れるからこそ、忘れてはならないのが“安全性”です。特に頭部を守るヘルメットの着用は、「義務ではないからしない」ではなく、「守るために着ける」という意識の変化が求められます。
今回ご紹介してきたように、法律上の区分によってヘルメットの扱いは変わります。特定小型原動機付自転車では努力義務、原付では完全な義務ですが、区分に関係なく、転倒・接触・事故時に命を守る装備として、ヘルメットの重要性は誰にでも等しく存在しています。わずか数千円の投資で、安全性が何倍にも高まるのなら、それは“損”ではなく“備え”です。
「義務じゃないから」ではなく、「しておいた方がいいから」着ける。その判断が、未来の自分を守ることにきっとつながります。電動キックボードを本当に楽しむためには、“速さ”や“便利さ”だけでなく、“正しさ”と“安全意識”も必要なのです。



あなたの大切な時間や、かけがえのない日常を守るために、ヘルメットはきっと役に立ちます。電動キックボードを自由に、安全に、そして心から楽しむためにも、「着けて当然」という新しい常識を、今日からあなたのライフスタイルに取り入れてみてください。
安全で快適な電動キックボードライフは、あなたの意識一つから始まります。